【FF9】 ファイナルファンタジー9 / PlayStation
ワロスカットをLv1でやってみた
2011.07.17 録画
2011.08.15 執筆
ワロスカット
タイトルにある 【ワロスカット】 とは何か。
簡単に述べると、メンバーを戦闘不能にして、最終ボス永遠の闇の大技グランドクロスをジャンプで回避した後、すぐに攻撃メンバーを蘇生させて、「突撃」で一気に畳み掛ける一連の戦術のことです。この戦術は2011年6月19日のリアルタイムアタック(RTA)で披露されて以来、最終ボスの安定撃破法としてRTA界で流行っています。ここに紹介しておくのも悪くないでしょう。
単純にトレースするのもアレですから、通常の低レベル攻略でお馴染みの制限の下に試してみたいと思います。
今回はワロスカットを試すのが目的です。したがって、本質的なところはレベル1の部分で、他の禁止項目は戦術上禁止する意義が薄いことを注意しておきます。そもそも自動復活は必要ありませんから、制限としては蛇足です。具体的な解説は後ほどにして、攻略がどんな感じのモノか理解していただくために、まずは動画をご覧いただくのがよいかと思います。筆者の不手際により残念な仕上がりになっていますが、どうぞ。
もしかしたら素人目には「何が起きた!?」とか「ニュートンリングはどうした?」、「レベル1なのに、ダメージ量が多くない?」と映ったかもしれません。また、やり込み経験者の中にも「おお、次のグランドクロスに間に合うのか!」と感想を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。もっとも、熟練された方ならば「一部の行動が理解できない。詰めが甘い」とご意見を下さることと思います。
最終ボスとやり込み
最終ボスは、低レベル攻略(LLC)やタイムアタック(TA)などのやり込みをする上で、かならず克服しなければならない困難のひとつです。これまでにさまざまな戦術が開発されました。この辺り、少しだけ紐解いておきます。
FF9発売当初の2000年7月から、魔法返しが効かなかったり常軌を逸した割り込み攻撃をしたりと、不可解極まりない性質を持った魅惑的な存在として認知されていました。しかし、すぐにも不可解さの中に一筋の光が差し込みました。攻略上の土台を築いたその光は青の衝撃モードの発見です。すなわち、(今で言う)元気なメンバーが1人以下の状態では
という行動ローテーションに限定される、というものです。これを受けて、おまじないなどの自動復活を利用して瀕死キャラを増やし、固定ダメージ攻撃などを活用しつつ速攻で倒す方法が、低レベル攻略やタイムアタックに限らず、最終戦の一般的な手法として普及しました。
その後は調査および研究も進んで、特にスタイナーの剣技「突撃」の効用が確認されると、対ボス戦術に組み込まれるようになります。その完成形が次のレポートに詳細に記載されています。中でも最終ボスに対しては、見事なまでにその効力が発揮されています。
このやり込みでは、2001年1月に完全解明したダメージ公式を駆使して、ダメージ倍率を調整したビビの黒魔法により瀕死キャラの一発増産に成功しました。「突撃」へとすぐに移行できる点も併せて、従来の自動復活を利用した方法に比べて優れています。これは低レベル攻略の為せる業として見応えがあります。なお、戦闘理論を応用したこの戦術はもっとも美しい戦術とされています。
このような戦闘理論を巧みに用いる術は一部のやり込み人に受け継がれたものの、FF9やり込みはすでに十分に育った状態であったため、大きな変革にはなりませんでした。その後は戦闘理論の整備が始まり、その過程で次に至ります。
これは、永遠の闇の大技ニュートンリングはもうひとつの大技グランドクロスがトリガーになっている、という新事実の下に達成されました。そこで紹介されたグランドクロスをフライヤのジャンプで回避する戦法は、おそらく昔からあったのでしょうが、背後にある原理を解明したものはこれが初だろうと思われます。
青の衝撃モードに関するこの新事実をもって、FF9やり込みはひとつの終焉を迎えます。
なぜ「今」なのか、その背景
それから7年と半年を費やしてのワロスカット新戦術。なぜ「今」だったのか。
FF9の代表的なやり込みである低レベル攻略およびタイムアタックは、理想を追求する点で共通しています。成功するまでやり直すといったプレイスタイルがそれを物語っています。特に、低レベル攻略の場合は付帯条件をより厳しく、また「そんな条件でクリアできるのか?」という意外性や、条件の厳しさの中での戦術理論の美しさが常に求められました。
先に紹介した木村さんの戦術により、以降「突撃」は使わないのがもっともらしく、また筆者によるジャンプ回避も「ひとり」という制限がその精神を暗に示すことになります。この流れにおいて、「突撃」をジャンプと組み合わせる発想は生まれにくいでしょう。したがって、これらを合わせ持つワロスカット戦術がこの時代に開発された可能性は低かったと考えてもよいと思います。
もし、戦術開発の可能性があるとすれば、条件からの開放が必要になります。それを低レベル攻略で実践するにしても、既存の条件に劣ると錯覚しやすく、この方面での開拓はやはり望めません。そこで思い当たるのがRTAです。特別な条件もなく、やり直しよりもリカバリーが大切で、自由な発想が生まれやすい環境がそこにあります。そして、プレイヤーやRTA観戦者たちの手によって、いくらか技術が入り込みました。だから「今」なのです。
RTAだからこその新戦術
2004年当時ドラゴンクエストで流行っていたRTAは、2006年になって東京大学ゲーム研究会の企画によりFF全般に導入されました。FF9はその後しばらく氷河期でしたが、その頃の文字実況中継とは媒体を変えて2009年頃から活性化します。つまり、ニコニコ動画をはじめとする動画共有サイトにおけるRTA生放送です。
2010年以降はTAベースだったRTA戦略が変遷します。元ハンサムさんによるクイナカットと呼ばれるDisc1でクイナを回収しないルートの確立後、錬金の最適化や装備の吟味、戦術の洗練を経て、永らく困難だった10時間切りのタイムが出せるまでになりました。また、ほとんどセーブをしないのも特徴のひとつに挙げられます。セーブをしなくなったと言った方が正確かもしれません。
にも関わらず、安定性と速攻撃破が課題である最終ボス戦術に、昔と変わらず決め手はありませんでした。そうした中、ワロスカットはその両方を完全に克服するものであり、見た目の奇抜さや万人向けの簡易的な方法も相まって、その功績がニュースになった訳です。運の要素が絡むグランドクロスを排除した抜群の安定度と撃破タイムが1分以上も縮まる様子は、まさに神業に見えたことでしょう。
このワロスカットの発明は偶然?見出したジャンプ回避からの自然な着想に由来します。トマトごはんさんを中心に検証を重ねた模様。そこにタイムコントロール技術があったことも発明に一役買ったはずで、修得技術の高さも見過ごす訳にはいきません。ここにRTA時代と技術の巡り合わせのよさを感じます。なお、この新戦術は原理の再発見という位置付けにはなりますが、「突撃」との組み合わせ方がRTA的に妙技だと思います。(※)
※ これをジャンプ回避戦法の実用化と評するは、分析派RTAプレイヤーのホーリーさん。なるほど!
オリジナル新戦術の概要
ワロスカットが初披露されたときの戦闘メンバーと装備は次のとおりである。また、サポートアビリティに与一の心、MP消費攻撃、バードキラー。フライヤにはいつでもリフレクをさらに追加。以上の準備により、青の衝撃を受けての瀕死や自殺の確実性、また、敵の攻撃魔法によるフライヤの生き残りが図られている。
キャラクター | 武器 | 頭 | 腕 | 体 | アクセサリ |
---|---|---|---|---|---|
ジタン | ザ・タワー | − | − | 魔人の胸当て | パワーベルト |
スタイナー | エクスカリバーII | ミスリルヘルム | − | − | バトルブーツ |
フライヤ | ホーリーランス | ミスリルヘルム | − | シールドアーマー | リフレクトリング |
サラマンダー | ルーンの爪 | − | − | 魔人の胸当て | パワーベルト |
ワロスカットの流れを順に示しておく。隊列は前列、ATBはウエイトの設定である。
この頃のRTAでは最終レベルが30前後になり、たたかうで約4500以上のダメージが見込め、スタイナーは9999、ジャンプで1500ダメージとなる。最大HP54100に若干届かない可能性があるため、戦闘開始直後に先制していると安定。いつでもリフレクは魔法反射によってこの欠点を補うものとしても機能する。
なお、永遠の闇の素早さは23で、レベル1ジタンのそれと同じであることを指摘しておく。したがって、タイムコントロールを使えば、成長したジタンが2回行動するのは容易い。サラマンダーではなくジタンを生き返らせるのは理に適うことである。
※ 素早さによっては、永遠の闇の行動間隔よりもヤリの発動時間の方が短くなる。ヘイスト状態では確実なので注意。
レベル1に向けて
レベル1で挑むためには低レベル攻略が欠かせません。いわゆるパンデモニウム3連戦の戦い方によって最終レベルが異なってくるため、攻略の型で戦闘メンバーが制限されることに注意します。
今回、戦術上フライヤとスタイナーを除外することはできません。また、戦力的にジタンとサラマンダーが欲しいところですが、プレイ条件があるので同時に使ってはいけません。そこで、ジタンとサラマンダーのどちらが優位か、ちょっと概算してみます。
ジタンはアルテマウェポン装備、サラマンダーはカイザーナックル装備で、さらに弱点と属性強化を狙うことを想定します。さて、ダメージ倍率の下限値は、ジタンは力と気力の平均、サラマンダーは力に依存するため、初期能力値では両者同等です。また、どちらも同じ程度の装備が可能で最終的な能力値の補正もほとんど変わりません。
つまり、両者の比較は攻撃力と属性補正のどちらが勝るかに尽きます。そこで、これをダメージ計算式で比較します。サラマンダーの攻撃力を x とすると、ジタンの攻撃力は x+25 になります。永遠の闇の物理防御力は28なので、ダメージ倍率を n として単純計算すると以下のようになります。
サラマンダーが優位になるには S−Z>0 となればよく、計算すると S−Z = (5/4) * xn−60n です。もっと粗く 5/4→1 と見積もっても S−Z = [ x−60 ] * n ですから、x>60 であればサラマンダーが優位となる訳です。(※)
確認しましょう。今想定している武器はカイザーナックルで、その攻撃力は x = 75 ですから問題ない数値です。ジタンよりもサラマンダー、したがって低レベル攻略はジタン31型で進めておきます。単純に攻撃力だけを見るよりも、ダメージ倍率を補正する方が強力であることがお分かりいただけたでしょうか。
※ 本気計算メモ ※
ダメージ倍率の小数点以下切り捨て処理により、S の最終倍率は n が4で割って1余るとき一番悪く (9/4) n−5/4 となる。これで計算すると、S−Z>0 となるためには [ x−48 ] * [ n−1 ]>20 を満たさなければならない。レベル1でも n>21 だから x>48 となる。
装備の選定
戦闘メンバーの枠がひとつ残っていますが、先に装備を選定しておきましょう。
まずは弱点属性である風と聖を突き、属性強化を図ります。次に、ダメージ倍率の底上げに力重視で選定して、全体を調整していきます。ただし、スタイナーは気力の増分も頭に入れておかねばなりません。サポートアビリティは与一の心、MP消費攻撃、バードキラーが標準装備になります。フライヤにはダメージ補完のためにハイジャンプも付けておきます。
キャラクター | 武器 | 頭 | 腕 | 体 | アクセサリ |
---|---|---|---|---|---|
スタイナー | エクスカリバー | バルビュータ | ベネチアシールド | マクシミリアン | 転生の指輪 |
フライヤ | ホーリーランス | カエサルヘルム | ベネチアシールド | グランドアーマー | 天使のイヤリング |
サラマンダー | カイザーナックル | グリーンベレー | パワーリスト | 力だすき | 黒帯 |
このときのダメージは、スタイナーたたかう:6615〜7350、フライヤたたかう:4182〜4794、ジャンプ:1700〜1904、サラマンダーたたかう:6768〜7614となります。上記ワロスカット戦術の流れに対して、ジタンをサラマンダーに置き換えてみると、なんとか行けそうだと期待できます。
ここで、スタイナーのMP切れとこれに伴うダメージ減が心配になりますが、MP24 → 突撃(14→11) → 突撃(1→0)でちょうどよいのです。MP消費攻撃は、残りMPが消費MPより少なくても使い切って効果を出す仕様なので、心配は無用だという訳です。攻撃面の問題はありません。
ところが、これは失敗します。実は、素早さが低すぎるために、敵の行動モーション中にATBが溜まりきらないのです。上記オリジナルのワロスカットが上手くいく理由のひとつに、ATBが十分溜まるといった事情があります。しかし、原因がはっきりしているので、解決案はすぐに思いつきます。
戦術の調整
上述した課題はいつでもヘイストで解決します。魔石力を必要以上に消費するので気が進まないのですが、ワロスカット戦術を再現するためには、ATBスピードを上げざるを得ません。
これで再現できるにしても、ダメージ減少や攻撃回避などの弊害が伴うため、行動回数を少しでも多くします。そのために戦闘開始直後の先制攻撃はとても大切です。ただ、その後の自殺が間に合わなくなるといけないので、戦闘メンバーにビビを起用して、攻撃魔法で一度に自滅する策を採ります。
その攻撃魔法はいろいろと選択できますが、ダメージ倍率を調整するのも面倒なので、フライヤに無効耐性のある属性で絞っておきます。ここで、本来ならば能力値とダメージの変動のバランスを見て決定すべきですが、「腕」装備を外さないことが念頭にあったため「ウォータ」を選びました。これは、RTAではないので青の衝撃回避にそこまで深刻にならなくてもよい、という考えの下に。
キャラクター | 武器 | 頭 | 腕 | 体 | アクセサリ |
---|---|---|---|---|---|
ビビ | メイスオブゼウス | グリーンベレー | パワーリスト | ローブオブロード | エルメスのくつ |
以上の考察を基に、次に注意して戦術を組み直します。
ここまで読めば戦術の展開はお分かりでしょうから、文章よりも動画で再確認とした方が合理的でしょう。
検証と反省
動画をご覧いただいたとおり、せっかくのベストな展開にも関わらず、ミスが目立ちますね!
以下、気になる点を列挙します。これ以外にも突っ込みどころはあると思いますが、そうした数々の気付きをご自身のやり込みに活かしてくだされば、この動画も救われるでしょう。どうかこの点、ご理解ください。
操作ミス
改善点と補足
あの単調で退屈なジャンプ回避を華麗な技として紹介できたことに感謝し、これにて解説を終わりにしたいと思います。
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おまけ → 真Lv1ワロスカット (ニコニコ動画)